ここ数年グラッサージュ（鏡面磨き）のご依頼が増加しており、靴磨きの注目度の高さを肌で感じます。

そんななかメダリオントゥの鏡面磨きがどうも上手くいかないというのをよく耳にします。

 

そこで今回はメダリオントゥの鏡面磨きについて簡単にですがポイントを踏まえてご説明（自己流）します。

 

 

今回磨くのはこちらのセミブローグシューズ。

 

 

まずは馬毛ブラシでホコリを落とします。

 

 

次に古いクリームの除去。

この作業を怠るとムラのある仕上がりになりますので、しっかりスッピンにしましょう。

（ゴシゴシ力を入れるのは革を痛めますので厳禁です）

靴の状態によって道具を使い分けますが、基本的にユニオンワークスでは２フェイスローションを使用しています。

 

 

右が汚れを落とした状態です。

 

 

そのあとは新しくクリームを塗り込みます。

厚塗りにならないよう薄く満遍なくを意識してください。

厚塗りになるとベタついた仕上がりになり、ワックスが乗りません。

黒靴はもちろんUWオリジナルクリームを使用。

 

 

染料を多く含んでいますのでコバの補色にももってこい。一緒に塗り込みます。

 

 

塗布したクリームの成分を定着させるため５〜１０分ほど置いたら豚毛ブラシでブラッシング。

ブラッシング後に布で余分なクリームを拭き取ります。

触ってみてサラッとした感触であれば下処理は完了です。

それではいよいよグラッサージュの工程に移ります。

まずは下地作りから。

 

 

キャップを大きく三分割してトゥからヴァンプ側にかけてグラデーションになるようにワックスを乗せる量を変えます。

グラデーションに仕上げることでヴァンプからの繋がりが自然で上品な仕上がりになります。

この三分割を意識すると綺麗なグラデーションになりやすいですので是非試してみてください。

 

 

お店では柔らかいワックスと硬くなったワックス両方を使います。

簡単に説明しますと毛穴を埋める工程は硬いワックス、仕上げは柔らかいワックスといった使い分けです。

（上記は時短のためで、開封したばかりの柔らかいワックスのみでも鏡面にできますので２つ用意しないといけないことはありません）

 

下地作りは指を使って毛穴を埋めていくのですが、メダリオントゥの鏡面磨きで失敗しやすいポイントの１つ目がこの工程。

よくメダリオンにワックスが埋まっているお靴を拝見します。

これはおそらく一度に塗り込むワックスの量が多いため。

 

 

早く毛穴を埋めたいという気持ちを抑えて、一度に取るワックスの量はこのくらいがオススメ。

先ほどの三分割を意識しながら薄いワックスの層を何度も塗り重ねていくイメージです。

 

 

ある程度毛穴が埋まってきたなーとなったら次の工程に移ります。

（伝わりづらい写真ですみません・・・）

 

 

次はいよいよネル生地を使用して磨いていきます。

この工程はネル生地を湿らせて行うのですが、ここがもっとも失敗しやすいポイントかと思います。

よく聞く失敗は磨いているとどんどんワックスが剥がれてくるというもの。

これは取るワックスの量が多いかネル生地に含ませる水分量が多いことが原因なのがほとんど。

特にメダリオン部に水が染み込むとどれだけ頑張ってもワックスは乗りません。

染み込んでしまった時は水分が抜けるまで触らず時間を置きましょう。

メダリオントゥの靴をを磨く場合はとにかく水の量に注意して磨くことをお勧めします。

 

 

ハンドラップをお持ちの方は１プッシュ分をネル生地に含ませるのは多すぎます。

半プッシュもしくは1/3プッシュくらいで十分です。

 

 

ネル生地が濡れているといよりもほんのり湿っているくらいを目安にしてください。

 

 

ハンドラップお持ちでない方は指で水滴を垂らして磨くとやりやすいです。

 

水の量はこのくらいで十分。

メダリオンに干渉しない箇所に垂らしてください。

ワックスを取り過ぎない、水をつけ過ぎないことを意識して優しくワックスの層を重ねていくと

 

 

いい具合に鏡面が出来上がってきます。

 

 

ここまできたら山羊ブラシを使って三分割している境界線をボカして馴染ませます。

 

 

最後に新しいネル生地でワックスは使わず水のみを含ませて研ぐイメージで鏡面を整えます。

ここも水のつけ過ぎは厳禁ですよー！

刷毛跡が消えて綺麗な鏡面ができたら完成。

 

 

左：Before　右：After

 

 

 

いい具合のグラデーションになったのではないでしょうか。

ヴァンプからの繋がりも自然です。

 

以上、グラッサージュの工程でした。

 

どの靴の場合でもそうですが、特にメダリオントゥの場合は１回に取る”ワックスの量”とネル生地に含ませる”水の量”に注意して作業を行うと成功しやすいと思います。

これまで失敗していた方もこれから挑戦したい方も是非この２点を意識してチャレンジしてみてください。

もちろんお任せいただければ綺麗に仕上げますので是非ご依頼ください。

 

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また、作業で使用していますネル生地は販売しております。

これが使いやすいネル生地でして、スタッフ各々が意見を出して完成した逸品となります。

生地の厚み、起毛感、柔らかさ、色とこだわりが詰まっていますのでよろしければお試しください。

 

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ありがとうございました。

横浜店　シン