まず、今回お願いしたのは履く前のケアです。
なにしろ25年から30年前の靴ですから、デッドストックでも油分は切れているはずです。
そのまま履いたら醜いシワや、ヒビ割れの危険性があります。
この場合は乳化性クリームをたっぷり塗り、1日放置して、
その後よくブラッシングするのがユニオンのやり方。
ガンはアニリンカーフなのでむやみに光らせず、
トゥの部分だけワックスで軽く鏡面磨きを施してくれたそうです。
心なしか全体にしっとりとした艶が感じられますね。
次がお約束のビンテージスティール。
トゥはヒールと共に最も摩耗が早い部分なので、減る前にトゥチップを打っておけば安心です。
特にビンテージスティールは、ソール面とチップ面に段差がつきませんから、
履いていてもまったく違和感がありません。
新品の状態で打つほうが手間がかからないぶん割安なので、
新しい靴を履きたい気持をグッと抑えて、ユニオンワークスに駆けつけることをお勧めします。
しかし改めて見ると、ロッドソンのアウトソール形状は独特ですね。
これはTURNING FOOT(ターニングフット)と称する内側に振れた、
いわゆるオブリークトゥの1種です。
これに最も近いのはAldenのモデファイドラストでしょう。
こちらは1963年に開発され、ハンマートゥやX脚など脚にトラブルを抱えた人でも
快適に歩けるように開発された木型です。
アーチ部分を絞りこんだインサイドストレート、アウトサイドカーブのラストは
足の指でジャンケンができるほどの楽な履き心地です。
しかし私がにらむところ、デザイナーであったジェラールセネさんの場合は、
スタイル優先の結果に辿りついたラストのような気がします。
今日に至るまで、彼の作る靴というのはシャープさが持ち味です。
特に近年は、足の形状とはほど遠いスマートな靴を発表していますね。
見た目の美しさにどうしたら靴としての実用性をマッチさせるかという研究の末、
開発されたラストではないでしょうか。
実際にガンに足を入れても、爪先の窮屈な感じがまったくありません。
これも私や中川代表がロッドソンを偏愛する理由のひとつです。
こうなるとガングロ(GUN BLACK)が猛烈に欲しくなってきました。
あるいはフローシャイムのユマ、ブラックコードバンで満足するか。
スリップオン好きの悩みはまだまだ尽きません。
yo-c