スワンネック

スワンネック

Feb 20, 2020

モデル名や、部位の名称、専門用語で靴の話をするのをカッコよく感じてしまうのは私だけでしょうか?

少年の心を持った男性陣であれば、共感を得ていただけるはず!

靴だけにとどまらず、衣類や車、腕時計などにも共通する大きな話題ですが、

今回は「スワンネック」と呼ばれる部位に的を絞って紹介していきたいと思います。

「スワンネック」? と思った方もいるかもしれませんが、

まずは、以下の写真をご覧下さい。

ジョンロブ 「シティⅡ」 ラスト 7000

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クロケット&ジョーンズ 「ケント」 ラスト 341

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エドワードグリーン 「チェルシー」 ラスト 202

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チャーチ 「コンサル」 ラスト 173

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英国のシューズブランドのストレートチップ4種

なかなか並べ見ることもないので、写真を撮ってみました。

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サイズが統一されていないので見比べることが難しいですが、ノーズが長いものや、CAPとヴァンプの比率などが違います。

さらに細かく見ていくと、ステッチのピッチ(縫い目の幅)なども異なり、縫い方一つで印象が変わるのが感じ取れました。

それぞれブランドの特徴があり、美しくも異なった表情のある靴だと思います。

さて、本題に!

実は先ほどの6枚の写真の中に「スワンネック」と呼ばれる部位があります。

どの部分か分かりますでしょうか?

。。

。。。

正解はこちら!

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エドワードグリーン 「チェルシー」 ラスト 202

レースステー脇を縫うステッチが、一度後方へターンして大きなS字カーブを描きヴァンプに落ちています。

この部分のステッチのことを「スワンネック」と呼びます。

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文字通り「白鳥の首」のような形ですね。

現在は、たくさんのブランドが採用している、「スワンネック」ですが。

始まりはエドワードグリーンのある出来事から生まれたディテールでした。。。

時代は90年代後半、エルメス製品の生産事業が始まります。

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エドワードグリーンがジョンロブへ向けての生産をしたことにより、
ジョンロブの親会社エルメスに革靴の品質を高く評価され、傘下への誘いをもちかけられました。

一度は手を組みますが、次第に経営は悪化していき最終的には創業以来からの工場や木型、型紙までもを手放すことになってしまいます。

なんとかブランド自体は存続しましたが、今までの型やデータを失った為、新しい木型やデザインの開発に励みました。

その中で生まれたのが…。

エドワードグリーンのチェルシーを象徴する「スワンネック」でした。

従来のデザインでは存在しなかったステッチであり、チェルシーを始めとするオックスフォード(内羽根)に採用され、徐々にブランドの意匠として人々に浸透していき、現在まで引き継がれるモデルに至りました。

経営の危機から、生まれた「スワンネック」

今ではブランドの象徴ともされているデザインですが、
エドワードグリーンの歴史の背景を辿っていくと、ただのステッチでは無く、そこには職人や経営者の苦楽や悲喜、言葉では言い表せない感情が具現化された靴の大切な1つのステッチだと私は思います。

そんなロマンが詰まった靴は、自身にとって大切な一足となるのではないでしょうか?

「チェルシー」はストレートチップであり、ビジネスではとても活躍するモデルです。

重要な会議やプレゼンの場面で、波乱万丈な歴史が背中を押し、一歩踏み出せる様な心境になったとしたら…。

それはエドワードグリーンというブランドを支えてきた人々を、称賛していると言えるのではないかと思います。

エドワードグリーンの靴に限らず、どのブランドにも共通することであり自身の相棒のような靴を履けるのは、改めて幸せなことだと思いました!

今回は「スワンネック」の紹介でしたが、まだまだ沢山あるブランドの背景などを紹介していけたらと思いますので、是非ご覧ください。

ありがとうございました!

銀座店 ・ 青山店   滝口